体と身体の違い
「からだ」という字を書くとき、一番に思い浮かぶのは「体」ではないかと思います。
しかし、よく使われるもう一つの漢字に「身体」があります。
この二つに何か違いはあるのでしょうか?
知っているようで知らなかった使い分けや意味、正しい使い方などを今一度確認してみましょう。
体と身体、意味の違いや使い分けは?
◆体
常用漢字の表記。物体から動物や人間など広い概念で使用される言葉です。
物理的な、固体としての肉体の事を指します。
「今日は体が空いている(暇である)」「体が小さい」「煙草は体に害がある」など、体格やその人の状況・様子を表すのに使うことが多いです。
一般的な「からだ」の漢字として最も幅広く使われています。
◆身体
常用漢字外の表記。常用漢字では「からだ」ではなく「しんたい」と読みます。
ほぼ人間のみに使用される言葉。医学的、栄養学的な表現で、心身の事を指します。
「健全なる精神は健全なる身体に宿る」「身体に異常なし」など、精神が宿る意味合いを表すのに使うことが多いです。
また公的な文章や改まった言い方をするときは「身体」が使われることが多いようです。
「体」「身」の成り立ち
では、なぜ肉体という意味の漢字が「体」、心身という意味の漢字が「身体」と言われているのでしょう。
これは、「体」と「身」の言葉の成り立ちにヒントがあります。
「体」は、「殻」に接続語の「だ」が付いたものが語源と言われています。
平安時代、魂と体を区別して考えており、セミの抜け殻や亡骸など、命のこもっていない肉体の事を「からだ」と呼んでいました。
室町以降は、生きている生物の体としても「からだ」という言葉が用いられるようになり、魂と心を区別して考える事が少なくなってきました。
やがてからだ(=体)は、生きていることが前提の、頭から足の先まで全てを指す言葉に変わっていきました。
一方、平安時代には、「身」は魂の宿った肉体とされてきました。
つまり、魂の宿った肉体(=身)の外側に有る形がからだ(=体)である、という概念であったようです。
そういった概念が、今も根本にあるため「体=物理的な肉体」「身体=心身」と言われているのかもしれませんね。
「body」は体?それとも身体?
体というと、英語でbodyということが一番に頭に浮かぶと思います。
実際、bodyの意味は頭・胴体・手足の全てを一まとめにしたものという事で、特に胴体にあたる部分の事を言う場合が多いです。
しかし、bodyと表すのは人間だけに限った事ではありません。
例えば、車の胴体の部分の事をbody(ボディ)と呼ぶこともありますよね。
以上の事から、体と身体の意味の捉え方から考えるとbodyは身体ではなく体という意味に近いのではと思われます。
「おからだに気をつけて」の場合、漢字は体と身体どちらを使う?
上記を踏まえた上で考えると、手紙などの締めくくりなどに使われる「おからだに気をつけて」は、体か身体かどちらが正しいなのでしょうか?
正解は、身体です。
物理的なものではなく、健康状態や社会へ関わる都合などの観念で使われる言葉なので、身体となるのです。
また、体と書いても問題はありませんが、手紙など改まったシーンなので、丁寧な言い方とされる身体の方がマナーとしては相応しいでしょう。
「躰」は、体・身体と違いがある?
あまり普段見慣れない漢字の「躰」も「からだ」の漢字の仲間です。
音読みでは「タイ」「テイ」、訓読みでは「からだ」となります。
体や形、もの、もとになるもの、という事で、意味的には体と同じことになります。
似ている様で意味合いの違う、体と身体。
もし文章を作成するのに体・身体のどちらを書けばよいか分からなくなったら、用いるシーンや字の成り立ちを思い出してみてください。
きっとどちらの漢字を使えばいいのか、おのずと見えてくると思います!