箇所・個所、ヶ所・ヵ所・か所、意味の違いや使い分け。公用文では?
「危険箇所について説明を受ける」、「謎を解くポイントはニ箇所」、「1か所どうしても分からないところがある」・・・などなど、「かしょ」という言葉を使うことはままあると思いますが、それぞれの意味や使い方はどう違っているのでしょうか?
表記も「箇所・個所、ヶ所・ヵ所・か所」とさまざま。
ここではそれぞれの意味の違いや使い分けを取り上げていきます。
箇所・個所、ヶ所・ヵ所・か所、意味の違いや使い分け
◆「箇所」と「個所」
こんなことをいきなり言うと身も蓋もないですが、このふたつは「同じ意味、同じ読み方」です。
ですのでどちらを使っても問題はありません。
その上で、使い方に関して、状況や文脈で使い分けたほうがより意味が伝わる、という観点で説明します。
「箇所」・・・一般的にはこちらが使われることが多いです。
「箇」には「ものを数える助動詞」「あれ、これ、物や場所を指す」という意味があります。
二つ目の意味をふまえると「問題箇所」「危険箇所」などといった使い方がしっくりくるのでは、と考えられます。
「個所」・・・「個」には「ものを数える助動詞(ひとつづつ別になっているものを数える)」「全体に対する『ひとつ』」という意味があります。
「重要個所」と書いてもそれの説明をするのに「それは二個所あって・・・」と書くと若干の違和感を覚えるのは、二つ目の意味があるからですね。
ただ、「個」は「箇」の代用漢字として使われ、以下のような経緯もあってか、現在は「箇所」と書く方が多いようです。
◆代用していた漢字だった
昭和29年に当時の国語審議会によって、21年に内閣告示された「当用漢字表」には掲載されていた「箇」を削除して「個」で代用するとした「当用漢字補正資料」が作成されました。
しかし、これは「案」で終わり、決定しなかったこともあり、各所でその対応にズレが生じたと言われています。
更に昭和56年に「常用漢字表」が正式に告知された時「箇」は残す、と決定されました。
ここで終わりではありません。
また更に、平成22年に「常用漢字表」が改定されたことを受けて、マスコミ業界でNHKだけが表記を変更したようです。
NHK、新聞協会などのマスコミ業界は、昭和29年に「個」に「か」の読みを付けて「個所」と表記していましたが、平成22年にNHKのみ「箇所」に戻しました。
現在各所の表記を下記にまとめてみました。
・教育業界、NHK・・・昭和29年の「案」に振り回されず、正式告示を待っている間に、その話は立ち消えたことで、元のままの「箇所」を使用。(NHKは上記の流れで)
・NHKを除くマスコミ業界・・・昭和29年以降「個所」を使用。
・公文書・・・「常用漢字表」提示した側の立場なので「箇所」を使用。
◆「ヶ所」、「ヵ所」、「か所」
先ほどの2つの「かしょ」を理解していただいたところで、今度はこちらの3つです。
どのように使い分けしているのでしょうか。
「ヶ所」の「ヶ」は「箇」の略字です。
「箇」の代わりに「1ヶ月」「三ヶ所」といった使い方をするようになりました。
ただし略字を正式な文書に使うのはいかがなものか・・・と公文書ではほとんど使われることはありません。
続いて「カ所」ですが、こちらは略字ではありません。
「1ヶ月」を「いっ『か』げつ」と読みますが、この読みにちなんだり、「ヶ」と字形が似ているから、という理由から広まったと言われています。
ですのでこちらの「カ」は漢字や略字でなくカタカナなのです。
最後に「か所」。
そのままひらがなですね。
こちらは文化庁も推しており、公用文の時は「か所」と書くのが正しいそうです。
ですが、上記で公文書では「箇所」じゃなかったの?と思われた方もいたかと思います。
公文書の場合、固有名詞や特定の場所・部分には「箇所」、その場所や部分を数える場合は「か所」と使い分けられているようです。
◆まとめ
新聞協会やメディア、公文書で違いがあるのでややこしく見えますが、個人で作成する文章で使用する時はひとつの文書内で表記が混在していなければ混乱もまねかず、問題はないでしょう。
数でよく使われる「か」(「カ」、「ケ」)、場所を指す「箇」(「個」)など明確に違いがわかれば表記が混ざっても特に問題はありません。
困ったときは公文書の使い方に倣えば一番安心かと思います。
いかがでしたでしょうか?文書制作時などに少しでも役に立っていることを願います。